問題解決事例

原料替え時の清掃性を高める設計とは|混合残留・クロスコンタミ対策

原料を替えるたびに清掃が大変…そんな経験ありませんか?

粉体混合機を使用する現場でよく聞かれるのが、
「原料替えのたびに清掃に何時間もかかる」「粉が隅に残ってしまう」「完全に落ちない」という声です。
特に食品・医薬・電池材料・化学製品など、製品の純度や安全性が求められる分野では、
前ロットの原料がわずかに残るだけでもクロスコンタミ(異種混入)や品質不良の原因となります。

このため、近年では「清掃性の高い混合機設計」が重要な選定基準になっています。


清掃しづらくなる理由

粉体が混合機内部に残る主な原因は、構造的なデッドスペースと粉体の物性にあります。
代表的な要因として

・混合槽や羽根の角部・すき間に残留が発生する
軸受け部やガスケット部に粉が入り込みやすい
・原料が帯電性・吸湿性・粘着性を持ち、金属面に付着する
・羽根式の場合、撹拌軸まわりの流動が弱く粉が動きにくい

といった点が挙げられます。
このような構造では、物理的に粉を除去しにくく、清掃の手間や時間が大幅に増えてしまいます。


清掃性を高めるための設計ポイント

1. デッドスペースをなくす

まず最も効果的なのが、「粉が溜まる場所を作らない」設計です。
混合槽を滑らかな曲面構造にしたり、羽根と槽のクリアランスを最適化することで、
混合残留を大きく減らすことができます。

羽根を持たないタンブラーミキサーなどの容器回転式などは、構造的にデッドスペースが少なく、清掃性の面で有利です。
その中でも特にタンブラーミキサーは、タンクの構造がシンプルかつ着脱も可能であるため、清掃性については一番だと言えます。


2. 分解・再組立の容易さ

清掃作業の効率を左右するのが「分解しやすさ」です。
カバーやホッパー部を工具不要のクランプ式にする、
小型モデルなら軽量構造で一人でも扱えるようにするなど、
設計段階からメンテナンス性を考慮しておくことが重要です。

さらに、清掃後の乾燥を想定して開放性を高める設計にしておくと、水分残留による汚染を防ぐことができます。


3. 表面仕上げと素材選定

粉の付着を減らすには、表面仕上げの工夫も欠かせません。
接粉部を#400以上のバフ研磨や表面処理、フッ素コーティング等を施すことで、粉が滑りやすくなり、ふき取り清掃でも十分対応できるようになります。

ただしコーティングは、剥離によるコンタミの可能性を懸念される傾向にあるので、注意が必要です。


4. 清掃方法は「乾式」が基本 ― エアブロー・分解洗浄の効率化

粉体混合機の場合、タンク内部を洗浄することもありますが、ちゃんと乾燥されていないと水分の残りがあると粉が固着してしまうリスクもあります。

そのため現場では、

  • エアブローで粉を飛ばす乾式清掃
  • 分解してブラシ・ウエスで拭き取る開放清掃
  • 掃除機で吸引する局所清掃

などが一般的です。
最近では、エアノズルを内蔵して清掃時に槽内へ自動送風する構造や、
ホッパーやカバー部をワンタッチで取り外せる構造など、
「乾式清掃をいかに早く・安全に行えるか」が設計のポイントになっています。

タンブラーミキサーのように、タンク部分が取り外し可能なものは、清掃面で大きなアドバンテージとなります。原料ごとにタンクを用意しておき、素早く交換するのも有効的な方法です。


粉体の性質と清掃のしやすさの関係

粉体の清掃難易度は、原料の物性にも大きく左右されます。

原料特性清掃上の課題有効な対策
吸湿性が高い水分で固着・固結する乾式清掃、エアブロー方式
帯電しやすい金属面に付着するアース処理、導電性コーティング
油脂分を含む表面に膜が残る溶剤洗浄、撥水コート
軽量・微粉末飛散・再付着する密閉構造、局所排気併用

原料特性を理解した上で清掃方法を決めることが、結果的に作業効率を上げる近道です。


清掃性と安全性の関係

混合タンクの内部を直接清掃する際には、安全柵やインターロック機構が欠かせません。
回転部の誤作動や挟み込み事故を防ぐため、清掃モード時には自動的に駆動源が遮断されるように設計するのが理想です。
また、清掃作業中の姿勢負担を軽減する低床・傾斜型設計も有効です。


まとめ ― 清掃しやすい機械は、生産性も高い

清掃性を高めることは、単に「手間を減らす」だけではなく、
・クロスコンタミ防止
・停止時間の短縮
・品質安定化
・作業者安全性の向上

といった複数の効果をもたらします。
特に原料替えが多い少量多品種生産の現場では、清掃性=生産性といっても過言ではありません。

セイワ技研では、粉残り・清掃時間・洗浄効率などの課題に合わせ、
混合タンク構造や素材・仕上げまで、規格仕様をベースに一品ごとに最適化した設計も行っています。
「今の混合機が洗いにくい」「原料切り替えが多くて困っている」という方は、ぜひ一度ご相談ください。