問題解決事例

粉体機器のメンテナンス性を向上し効率化を図るための設計改善

粉体機器は、様々な業界で重要な役割を果たしていますが、日々の洗浄やメンテナンスは、しばしば作業効率を左右します。特に、粉体供給機、粉体搬送機、粉体混合機のような機器は、稼働時間が長く、原料の付着や詰まりなどのトラブルが発生しやすいため、定期的なメンテナンスが必要です。しかし、分解に時間がかかったり、洗浄が煩雑だと、生産ラインの停止時間が長引き、作業効率が低下します。

1. スクリューフィーダーのメンテナンス性向上

スクリューフィーダーは、使用する粉体の種類によっては詰まりや付着による残留が発生しやすく、定期的なメンテナンスが必要です。スクリューフィーダーの設計改善によって、メンテナンスの負担を軽減する方法は以下の通りです。

  • 工具レス設計の導入:スクリューフィーダーのスクリュー分解やホッパーの取り外し作業を、工具を使わずにできる「工具レス設計」を採用することで、部品の清掃や交換が容易になります。これにより、メンテナンスの時間が短縮され、生産停止時間を最小限に抑えることが可能です。
  • 分解・再組立の簡易化:接粉部パーツを簡単に分解できるような設計を導入します。特にスクリュー部は、粉体が残りやすいため、スムーズに分解できる構造が求められます。また、再組立の際に位置合わせや調整が不要な機構にすることで、作業者の負担が軽減されます。
  • 接粉部の表面仕上げ:接粉部への原料付着によるトラブルを防ぐため、材質はSUS304もしくは316Lを使用し、接粉部はバフ研磨仕上げを行います。これにより、粉体残留や詰まりが発生した際の清掃作業が、よりスムーズに行えるようになります。

2. バキュームコンベアのメンテナンス性向上

バキュームコンベア(エア搬送装置)は、粉体が本体内部に残ることや、フィルターが目詰まりを起こすことが多いため、定期的なメンテナンスが不可欠です。以下の設計改善がメンテナンス性を向上させます。

  • フィルター交換の簡易化:エア吸引ローダーのフィルターは、粉体の微粒子を除去するために重要な部品です。フィルターが詰まると搬送能力が低下するため、定期的な交換が必要です。フィルター交換を簡単に行える設計にすることで、作業者の手間を減らし、メンテナンス時間を短縮できます。
  • 自己クリーニング機能の導入:粉体の搬送中に発生する微粉末がフィルターへ付着するのを自動で除去する自己クリーニング機能(逆洗)を装着することで、フィルターの目詰まりや粉体の残留を減少させ、メンテナンス頻度を低減します。粉の吸引を行った後、原料排出のタイミングで圧縮エアーをフィルター内部から発射し、フィルター表面についた粉を振るい落とします。

3. 粉体混合機のメンテナンス性向上

粉体混合機は、混合タンク内で撹拌羽根を回転させて混合する方法と、タンク自体を回転させて混合を行う方法があります。羽根で混合するリボン式は洗浄のしにくさから出来るだけ避けたいところです。使用頻度が高いため、内部に粉体が残りやすい混合タンク部分には注意が必要です。洗浄性の高さを重視し、以下の設計思想がメンテナンス性も向上させます。

  • 混合タンクの脱着構造:ミキサーのドラムが脱着できる構造にすることで、接粉部の洗浄を確実に行えるようになります。これにより、粉体の残留によるコンタミの問題を解決することができます。同時に混合の際には、蓋が閉まった構造にすることで、混合中の異物混入も防ぐことが可能になるので安心です。
  • 混合タンクの傾転構造:混合ドラムを傾転可能な構造にすることで、原料の排出が簡単になります。また原料投入作業もやりやすくなります。プラス昇降機構があると、原料投入時は低位置で、排出時は昇降させて高位置で作業ができるためさらに効率的です。
  • シンプルな混合タンク形状:上記洗浄性を重視するのであれば、タンク形状も重要です。口が絞ってある形状は、混合後の排出に対しては有効ですが、簡易的に取り外して交換できる形がベストです。取り外しができない容器だと洗浄性は格段に低くなります。原料替えが多ければ多いほど、メンテナンス性を考慮して、出来るだけシンプルな構造を選ぶようにしましょう。

4. メンテナンス性向上のための運用管理

機器の設計改善だけでなく、適切な運用管理もメンテナンス性の向上に重要です。以下の運用ポイントを押さえることで、メンテナンスをより効率的に行えます。

  • 定期メンテナンススケジュールの導入:定期的な点検や清掃を行うことで、故障の予防や機械寿命の延長が図れます。特に、消耗部品の交換や内部の清掃を計画的に行うことで、トラブルを未然に防ぐことが可能です。
  • メンテナンス記録のデジタル化:メンテナンス履歴をデジタル化し、いつどの部品が交換されたかを管理することで、劣化が進んでいる部品の交換時期を正確に把握でき、予防保全が効果的に行えます。また、デジタル記録により、過去のトラブルの傾向分析も可能です。

5. まとめ

粉体供給機、粉体搬送機、粉体混合機のメンテナンス性を向上させるためには、設計の段階でメンテナンスの簡易化を考慮することが重要です。工具レス設計や自己クリーニング機能の導入、アクセス性の向上などの改善によって、メンテナンス作業の負担が大幅に軽減されます。

これにより、機器の稼働率が向上し、生産効率も高まります。また、適切なメンテナンス管理を行うことで、機械の故障や不具合を未然に防ぎ、長期的に安定した運用が可能となります。

各機器の選定を行う際は、上記のポイントに注意して選定を行うと、あとのメンテナンスも楽に行えるようになります。