製造工程で発生した粉体原料をリターンし再利用するための機器構成を組む場合、搬送機としてスクリューを選ぶべきかエア搬送を選ぶべきか、という相談を受けることが多々あります。スクリューコンベア(傾斜または垂直)とエア搬送ともにメリット・デメリットがあります。
1. 傾斜スクリューコンベア
メリット
- 定量供給が可能: 粉体の搬送量を安定的に管理できるため、均一な供給が求められる場合に適しています。
- 低速搬送で粉体に優しい: 回転速度が比較的遅く、粉体原料へのダメージや劣化が少ないため、デリケートな粉体の搬送に適しています。
- 粉体の混合効果: スクリューの回転により、粉体が搬送中にある程度混合される効果があります。
デメリット
- 搬送角度に限界がある: 傾斜角度が大きすぎると粉体が逆流したり、搬送効率が落ちる可能性があり、傾斜角度に限界があります(一般的に45度以下が推奨される)。
- 詰まりのリスク: 付着性の高い粉体や凝集しやすい粉体では、スクリュー内での詰まりや粉体の閉塞が発生しやすくなります。特にリサイクル原料では粉体の流動性が低下している場合が多いため、詰まりやすい傾向があります。
- 搬送距離が制限される: 傾斜スクリューコンベアは搬送距離が限られ、長距離搬送には適していません。
2. 垂直スクリューコンベア
メリット
- 省スペース: 垂直スクリューコンベアは上下方向への搬送を行うため、限られたスペースで原料をリターンする際に有効です。
- 安定した搬送: 垂直のスクリューコンベアも一定量の供給を安定して行えるため、供給量のコントロールが容易です。
デメリット
- 搬送能力が限られる: 垂直搬送では原料の戻りが多く、搬送効率が上がりません。高いトルクが必要になるため、搬送速度が遅くなることが多く、搬送能力が限られます。
- メンテナンスが難しい: 垂直方向に設置されているため、トラブル時の分解など対応やメンテナンス、修理が難しく、時間やコストがかかる場合があります。
- 摩耗リスク: 粉体が常にスクリューの中で押し上げられるため、部品の摩耗が激しく、メンテナンスコストが増加する可能性があります。特に垂直スクリューは、原料の戻りが多いため高速で回転させる必要がありますので、この傾向が強くなります。
3. エア搬送(空気搬送システム)
メリット
- 長距離搬送が可能: エア搬送は遠距離でも効率的に搬送できるため、広い工場内や複数階にわたる原料の搬送に適しています。
- 高い搬送スピード: エア搬送は非常に高速で大量の粉体を搬送できるため、生産効率を高めることが可能です。
- 搬送経路の柔軟性: ホースを使用して任意の経路で搬送できるため、障害物があってもある程度柔軟なレイアウトが可能です。垂直・水平に関係なく搬送可能な点も大きな利点です。
- 密閉搬送による飛散防止: エア搬送システムは密閉されているため、粉体の飛散や環境汚染を防ぎ、作業環境をクリーンに保つことができます。
デメリット
- エネルギー消費が多い: エア搬送はエアコンプレッサーやブロワを使用するため、エネルギー消費が大きく、ランニングコストが高くなる傾向があります。
※特に、エジェクタ式の場合は、大容量のコンプレッサーが必要になります。ブロワ式の場合、短い距離の搬送では、大きなブロワは必要ありません。 - 粉体の劣化リスク: 高速搬送のため、粉体が衝突や摩擦で劣化したり、粉砕されたりするリスクがあります。特に繊細な粉体では品質に影響を与える可能性があるため注意が必要です。
まとめ
- スクリューコンベア
傾斜、垂直ともに定量性が求められる搬送にはスクリューが向いています。
しかし、長い距離の搬送には不向きと言えます。45°以上の角度では、極端に搬送効率が落ちるため、搬送量を確保するため大径になりがちです。粉詰まりがあった場合のメンテナンスに課題があります。 - エア搬送
長距離、高速搬送が可能で柔軟性が高い一方、連続的な定量搬送には不向きとなります。吸引-休止、それぞれの時間を設定し繰り返す動作になります。吸引によって高速でホース内を原料が移動するため、壊れやすい原料の場合は注意が必要です。
搬送距離や粉体の特性、工場レイアウト、コストを考慮しながら最適な方法を選定することが重要になります。